僕と漫画の話

漫画の思い出を書き連ねてみようと思います。

【AD編①】地獄の社会人生活

大学を卒業し、社会人になったころの思い出を書き連ねてみます。
 
前回のお話はこちら。

 

最悪のスタート

大学を卒業し、テレビ番組の制作会社へ入社。
僕は晴れてAD(アシスタントディレクター)となった。
 
これが地獄の始まりだった。
 
ADがキツい仕事ということは覚悟していたつもりだけど、
僕の想像を遥かに超えるものだった。
 
最初の数ヶ月は、制作会社の中で働いていたけど、しばらくしたらテレビ局に出向することになった。
 
テレビ局での仕事はまぁーキツかった。
 
まず、出向になった理由は、別のADが一人辞めるからとのこと。
 
その人の後任という事で僕が出向されたんだけど、
ろくに引き継ぎもされず、その人はすぐにいなくなった。
 
何をすればいいのか、全然分からないまま、初めての収録を迎え、ボロクソに怒られた。
 
最悪のスタート。
 
そしてスタートが最悪だとその後リカバリーするのはほぼ不可能だった。
 
「こいつは使えない」
 
一度そのレッテルを貼られたら、そこから挽回するのはほぼ不可能だった。
 
いや、実際僕は仕事が出来なかった。
やる気だけでなんとかなると思っていたけどそうではない。
 
仕事の効率とか、物覚えとか、上司に対して上手く立ち回る方法とか、
僕はそういうのが全然ダメだった。
 
毎日ボロクソに怒られる。
 
次第に自分が何をやっているのかも分からなくなって混乱する。
だからさらにミスをする。
 
そしてまた怒られる。
 
ディレクターは平気で人格を否定してくる。
 
萎縮してろくに喋れない。
 
僕はどんどん負のスパイラルへ巻き込まれていった。
 
 

唯一褒められたこと

 
とにかく仕事もコミュニケーション能力も最悪だった僕でも、唯一褒められた事がある。
 
漫画のことだ。
 
ある日喫煙所でディレクターと話していた時のこと。
 
そのディレクターは、普段からめちゃくちゃな事を言って、平気で人格まで否定してくるような最悪の人だった。
 
当時「進撃の巨人」が流行っていた。
 
僕もそのディレクターも読んでいた。
 
喫煙所で話していた時、なんかふとした流れで、進撃の巨人の話になった。
 
僕は極力そのディレクターとは話なんかしたくなかったんだけど、ふと思いついて、自分から話題を切り出してしまった。
 
「アルミン巨人説って知ってます?」
 
これは当時流行っていた有名(?)な考察だ。
 
エレンの母親を食った巨人の正体はアルミンなんじゃないかという説。
 
・エレンの母親が食われたとき、アルミンがどこで何をしていたのか描写されていない。
・巨人の髪型がアルミンに似ている。
・アルミンが全ての黒幕なんじゃないか。
 
といった考察だ。
 
後にこの考察はまるっきりハズレてた事が分かるんだけど、当時はこういった考察が流行っていた。
 
僕はそのディレクターに、「こんな説があるんですよ〜」と話してみた。
 
意外に食いついてきた。
 
初めてそのディレクターに「面白い」と言われた。
 
バラエティ番組のディレクターは、なにかと「面白い」か「面白くない」で判断する。
 
僕は「仕事ができないやつ」であると同時に「面白くないやつ」というレッテルが貼られていて、それが虐げられている原因だった。
 
そんな僕が初めて「面白い」と言われた。
 
素直に嬉しかった。
 
「自分が好きなものとか、ハマっているものだったら、それだけ面白い話ができるんだから、もっとそういうところを出していけよ」
 
そんな感じの事を、そのディレクターに言われた。
 
漫画家になる事を諦めて、なんなら漫画家を目指していたこと自体を忘れかけていたのに、
まさか漫画に関わることで褒められるとは思わなかった。
 
そうか、やっぱり僕は漫画が好きなんだ。
好きなことならイキイキと話せる。
 
思わぬ発見だった。
 
 
それから、僕の仕事ぶりは間違えるように変わった……
なんて事はなく、僕は相変わらずのクソ野郎だった。
 
そりゃそうだ。
この職場はバラエティ番組の制作。
四六時中漫画の話をしている訳ではない。
 
仕事でミスをして、怒られて、萎縮して、またミスをして。
そんな生活は変わらなかった。
 
けど、この時ディレクターから言われた
「お前の漫画の話は面白い」
という一言は、少しだけ僕の自信となった。
 
そして、この後何度か転職を繰り返すんだけど、
その度にちょっとだけこの時のことを思い出す。
 
漫画のことだったら楽しく話せる。
 
うん、ちょっとづつ自分のやりたいことがわかってきたかもしれない。
 
続きます。