僕と漫画の話

漫画の思い出を書き連ねてみようと思います。

【AD編③】人生一番の理不尽

テレビ番組制作会社での思い出を書き連ねてみます。
 
前回のお話はこちら
 
 
 

 

決定打

 
僕がADを辞める決定打となったのは、
ディレクターが作ったPR動画を、「演出」の人に見せに行った時のことだ。
 
番組の形態によって異なるが、ほとんどの番組は
「演出(総合演出)」→「ディレクター」→「アシスタントディレクター」
という役職で分かれていた。
 
僕は、ディレクターがほとんど直したPR動画を演出の人に見せに行った
 
「PR動画見てもらっていいですか?」
 
たかがPR動画だし、ディレクターがほとんど直した物なので、すんなりOKが出るだろうと思いながら、僕は演出に話しかけた。
 
「これお前が作ったのか?」
 
一通りPR動画を見た後に演出が言った。
 
「あ、一応…。ただ○○さん(←ディレクター)に見てもらって、
 ほとんど直してもらっちゃいました…」
 
僕は正直に答えた。


「全然ダメだな。」
 
 
…は?
 
僕は耳を疑った。
 
「間の取り方とか、テンポも悪いし、ナレーションも何を伝えたいのか分からない。
 ここのカットとかも、なんでこんなの使ったのか意味わかんない
 もっといいやつなかったの?」
 
 
ひたすらにダメ出しをされ続けた。
 
 
「いや、でもこれは○○さんが…」
 
 
このPR動画は僕が作った部分は原型をとどめておらず、
ほとんどディレクターが作った物はだという事を説明しようとした
 
「は?お前が作ったんじゃないの?」
 
「あ……一応……最初は僕が作ったんですが……
 あの……○○さんに見せたら……その……ほとんど直して……その……」
 
必死に説明しようとしたが、コミュ障の僕は全然上手く伝えられない。
 
「いいから、とにかく直せ」
 
演出は僕の言葉を遮り、そこで会話は終わった。
 
 
おかしいぞ。
なんでこんなにダメ出しをされるんだ?
 
僕のPR動画を直したディレクターは、演出の人にすごく気に入られていた。
 
このディレクターが作ったPR動画は、今まではほとんど一発OKが出ていた。
 
そのディレクターが作ったPR動画なのに、なぜこんなにダメ出しをされるんだ?
 
確かに最初は僕が作った。
けど、何度も言うけど、ディレクターがほとんどの箇所を直して、
僕が作った物は原型を留めていなかった。
このPR動画はディレクターが作った作品なんだ。
 
けど演出は何であんなにダメ出しをしたんだ?
普段、ディレクターの方には全然ダメ出しなんてしないのに。
 
僕はただ、ディレクターが作ったものを見せに行っただけなのに、
何で「僕が悪い」みたいな感じになっているんだ?
 
混乱して、何も考えられなかった。
 
結局そのPR動画がどうなったかはあまり覚えていないけど、多分またディレクターに直してもらって、なんやかんやあって納品されたんだと思う。
 
いまだに納得いかない。
 
なんでこんなことになったのか。
後々になって冷静に考えてみたけど、
結局あの演出は物の良し悪しなんて見ていなかったんだと思う。
 
仕事の出来ないADが、初めて作ったPR動画だから、内容はどうあれダメ出しをした。
 
ただそれだけの事なんだと思う。
 
なんて理不尽。
 
普段はやれ演出だの、構成だのって、それらしい事を言っているのに、
結局何も分かってなんかいないんだ。
 
この時のPR動画の内容が、本当にダメなものだったとしたら、
普段あのディレクターが作っていたPR動画にもダメ出しをしていたはずた。
 
同じクオリティのものを、僕が見せたっていうだけでダメ出しをするんだから、
やっぱりあの演出の人は、動画の内容なんか見ていなくて、「誰が作ったか」という事しか見ていなかったんだ。
 
あれから数年たって、今こうして思い返すと、「まあそんなもんか」と割り切れる部分はある。
 
ディレクターとか、演出とか、プロデューサーとか、大層な肩書きを持った人たちでも、
結局はただの人間なんだ。
 
構成、演出、テンポ、起承転結とか
それらしい事を言ってるけど、
そんな事よりも、「コイツが作ったんだからダメに決まってる」という感情で動いているんだ。
 
そりゃしょうがない。
人間だもの。
 
今ではこうして割り切れる(というか、もうどうでもいい)んだけど、
当時はそうもいかず、めちゃくちゃムカついた。
 
どう考えても納得いかなかった。
 
ダメだ。
こんなのは僕が夢見ていたものと違う。
 
僕はこの出来事をきっかけにADを辞めた。
 

漫画の話

 
ここ最近はADの辛かった思い出ばかりで、漫画の話を全然書いていなかったので、書きます。
 
 
ADになってから、漫画を読む機会が格段に減った。
 
日々の激務のせいで、漫画を読む時間なんて全然なかった。
 
かろうじて、それまで読み続けていた連載中の漫画は、
合間を見つけてコミックの新刊を買って読んだりしていたけど、
新しい作品との出会いは圧倒的に減った。
 
そんな時に見つけた新たな道。
 
それがWeb漫画だ。
 
当時、色々な所でWeb漫画が出始めて、その勢力を拡大している最中だった。
 
虫籠のカガステル
世界鬼
 
今ではどれも有名な作品。
当時、これらの漫画がネットで無料で読めるというのが衝撃だった。
 
中でも一番衝撃を受けた作品、
それは間違いなく「ワンパンマン」だ。
ONE先生が描く原作版と、村田先生が作画を担当する村田版があるが、
当時原作版を読んだ時の衝撃は凄まじいものだった。
 
決して絵は上手いとは言えないけど、
登場するキャラクターの魅力、
王道かつ奇想天外なストーリー、
怒涛の展開。
 
どれをとっても「最高」、いや「最強」の作品だと思う。
 
当時、ADをやっていて、いつものように夜中まで作業をして、
いつものようにオフィスのイスを並べて寝ようとしていたある時。
真っ暗なオフィスでスマホをいじりながら寝落ちをしようとしていたら、
何かの拍子でワンパンマンの存在を知った。
 
読み始めたら、それはもう面白いのなんの。
 
一気に虜になった。
 
こういう時、いつも思う事がある。
「面白い作品に出会えてよかった」
ってのはもちろんなんだけど、
それ以上に
 
「なんでこんなに面白い作品を、今まで知らなかったんだ」
「もっと早く出会いたかった」
 
と感ることがある。
 
その感情は、時に悔しさを通り越して怒りに変わる。
 
ワンパンマンに出会った時は、この感情がMAXに降りかかった。
 
悔しい。
こんなに面白い作品を今まで知らずに生きていた事が悔しい。
面白い作品を見つけるためのアンテナを張っていなかった自分が情けない。
 
こういう気持ちって他の人も感じるのだろうか。
もしそうだとしたら、そんな悩みを解決できるような事をしたい。
 
ワンパンマンと出会ったことがきっかけで、そんな事を考えるようになった。
 
 
ADを辞めて、半年ほどニートをして、
それからまた別の業界に転職する事になるんだけど、
この最初の転職の時はすごく色々な事を考えた。
 
まだ見ぬ、面白い作品に出会えていない人」に対して、
僕が出来ることはないのか。
 
そんな事を考えながら最初の転職活動をしていたんだけど、
結局、今となっても答えは出ていない。
 
その辺の、転職活動の話とか、転職した会社の話を、次回書いてみようと思います。
 
続きます。